男女の不倫をリサーチしてきた亀山早苗氏は、ラブホ街で半日ほど人の流れをウォッチすることがあるという。そこでは中年不倫カップルの多くに共通のパターンが見えてきた。
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景気が悪い現在、不倫の恋は少なくなっていると思われがちだが、そんなことはない。
むしろ、誰もが心寂しくなっているから、「贅沢はいらない、心と心がつながっていれば」と恋を求める傾向がある。
朱美さんが彼と会うのは、生活圏と少し離れた大きな町のラブホテル。彼女が軽自動車を駆って、彼を途中で拾うこともあるし、互いに車で待ち合わせることもある。
「軽食や飲み物は私が用意して、彼がホテル代をもってくれる。昼間ならフリータイムで安いから。経済的に負担はかけたくないんです。私は彼と一緒にいられればいい」
現代のダブル不倫はこのパターンが多い。実際、私は渋谷・円山町のラブホ街で半日ほど人の流れを観察することがある。いかにも不倫という中年カップルが、どこか人目を気にしながら入っていくのを何組も目撃した。女性たちの多くがデパートの袋を持っているのも印象的だった。デパ地下で飲み物や食べ物を買って行くのだろう。昼間のラブホはフリータイムで4000円台。そこでささやかな贅沢感を味わうのかもしれない。
不倫の恋の場合、セックスの相性もとても重要になる。多くの妻たちが、「彼とのセックスで、初めて“イク”という感覚を知った。今までそんなにセックスが好きじゃなかったのに、彼とはしたくてたまらない」と顔を紅潮させながら話す。
意地悪な見方をすれば、配偶者との間では慣れきったセックスが、相手が変わることによって刺激と興奮が強まり、相性がいいと思い込んでいる節もありそうだが。
朱美さんも、彼とのセックスで、生まれて初めてオーガズムを得た。
「やっと女になれたんだ、そんな気がしました。よく雑誌にはオーガズムを得たときの感覚が出ているけど、私には無関係だと思ってた。本当に頭が真っ白になって、体ががくがく震えて……。女に生まれてよかった、と思った瞬間でした」
男性側も、通常、妻とはそれほど濃厚なセックスをしているわけではないだろう。相手が人妻だと思うから、いつもより念入りに愛撫し、一球入魂でがんばり、相手の反応に自分も興奮する。それで「身も心も合う相手」とお互いに熱くなっていくのだろう。
※SAPIO2010年12月15日号