11月23日、北朝鮮軍による韓国・延坪島への砲撃事件が発生したが、これは尖閣の小競り合いとは質の違う国難である。朝鮮半島の戦火はいつ近づいてもおかしくない。
菅首相は南北交戦の第一報が入ると、「大変なことになった」とテレビをつけてニュースに見入った。去る8月、自衛隊の4幕僚長と会談した際、「法律を調べてみたら、総理大臣は自衛隊に対する最高の指揮監督権を有すると規定されている」と語り、今頃になって自分が最高司令官であることを知った“素人宰相”だから、イージス艦がどこを航行し、P-3C哨戒機がどんな情報を収集できるのかもわからなかったかもしれない。それならなおさら、テレビを見ている場合ではないだろう。
菅氏がニュースを見ながら公邸で会っていたのは防衛大臣でも内閣危機管理監でもなく、斎藤勁・民主党国対委員長代理だった。まず国会への影響を協議したのである。その日、菅側近は「野党は審議拒否ができなくなる」と喜び、国対幹部の一人は「政権の神風だ」と言い放った。首相以下、国家の危機にどう備えるかより、戦争を国会にどう利用するかで頭がいっぱいだったのである。
国を守る哲学を持たぬ総理の下で、この政権は国防不全状態を自ら作り出している。
※週刊ポスト2010年12月10日号