「市民税10%減」や「市議報酬半減」などの政策実現を目指す河村たかし市長と、それを阻止する市議会が対立する名古屋市で、新たな「バトル」が勃発した。
市長の支持団体が議会のリコール(解散請求)署名を46万5602人分提出していたのだが、名古屋市選挙管理委員会が11月24日、「無効票」がこのうち11万1811人分あり、本請求の法定数36万5795人分に届かなかった、と発表したのである。
「とんでもにゃあ話だがや。どう考えても“後出しジャンケン”だろうが」
河村市長がそう憤慨するには理由がある。選管は署名欄の「受任者」(署名を集める人)欄が空白だったうち約10万人分に対して、「調査票」を郵送しているのだが、その質問に二重三重に罠が仕掛けられていたというのだ。
まず、調査票には「署名の有効、無効を判断する重要な資料となります」とありながら、その判断基準が一切記されていない。その上で、「あなたは、どなたから署名を求められましたか」という設問があり、「1請求代表者」「2受任者」「3請求代表者か受任者かわからない」「4請求代表者でも受任者でもない方」という4つの選択肢が設けられている。このうち、どれが無効扱いかおわかりだろうか。
正解は「2」と「4」。たとえば、自分で進んで署名した場合、誰にも求められてないからと「4」に○をつけると、この人は無効扱いになる。「2」の「受任者」の場合は、受任者が集めたなら受任者の名前がなければいけないから、署名欄が空白の場合は無効なのだという。選管には、「受任者」と回答し無効扱いになると知った市民から、有効扱いとなる「わからない」へ変更する電話が相次いだ。
選管に問い合わせると、「地方自治法は具体的な調査方法までは定めていない。選管として公平中立に本人の意思が反映されるように判断している」とのこと。しかし、調査を受けた市民の不満は募る。
さらに選管の委員4人中3人が市議OBであることも、疑惑に拍車をかける。「市議OBの選管委員長や副委員長が選管を私物化し、引っかけ問題を作ったのではないか」(請求代表者のひとりである平野一夫氏)
河村市長vs市議会の闘いは、市議OBも参戦し、泥沼化しそうだ。
※週刊ポスト2010年12月10日号