北朝鮮が韓国・延坪島を砲撃した事件は世界中に衝撃を与えたが、この事件は日本にはいかなる影響をもたらすのだろうか? 今回の砲撃で、戦争への警戒レベルは最高レベルに上がるなど、さながら「戦時態勢」に突入した状態になっている。ジャーナリストの惠谷治氏は北朝鮮の行動について金正恩への後継体制を内外に示すパフォーマンスの一環だと語る。
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「金正日が後継者として1980年代に公式に決まった際にも韓国人が死亡したラングーン事件、金賢姫らによる大韓航空機爆破事件を引き起こしていて、今回の動きと似ています。軍事力を示したつもりでしょうが、手動で砲撃したことで着弾の精度は低かった。島には約1000人の韓国軍兵士が駐留しているが、被害を受けたのは北朝鮮の核実験を観測する軍事施設やガソリンを貯蔵していた貯蔵庫が燃えた程度。今の軍事力では北朝鮮は負け戦になるから戦争の可能性は低い」
その一方で、「韓国と北朝鮮との落とし所が見つけられないと戦火に発展する可能性もある。その場合、日本も韓国、米国との軍事協力のもと何らかの支援は必要になるだろうし、難民が北朝鮮から不法に流入することもあり得る」(惠谷氏)と警鐘を鳴らす。
朝鮮戦争から60年、アジアの領土問題はいまだ燻っている。
※週刊ポスト2010年12月10日号