常に時代を騒がせてきた孫正義・ソフトバンク社長が目下、政府と激論を交わすのが、光ケーブルで日本中を覆い尽くす「光の道」構想である。孫氏に「日本再生論」を聞いた。
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――そもそもなぜ「光の道」構想なのか。
日本が工業社会から高度情報社会に移行するために必須のインフラだからです。日本がなぜ元気がなくなったのか、80年代初めには「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれた時代から、失われた10年どころか、失われた20年を過ごしてきてしまったのはなぜか。
その最大の元凶は、日本の構造問題にあります。長く続いた農耕社会が終わった後、世界は工業社会の時代を迎え、そのなかで繁栄したのが米国でした。しかし、工業社会の末期になると大きなイノベーションが止まり、より安く、より壊れないもの、より丁寧なものをつくれる国が優位に立つようになった。おかげで日本は米国の工業社会に追いつき、追い越すようになったわけです。
ところがいまでは、日本の工業社会は、より安くという点で中国や韓国、台湾に追い抜かれ、さらにテクノロジーの面でも追いつかれようとしている。
※週刊ポスト2010年12月10日号