不況と超低金利のまっただ中でも数千万円の資産を築いた30代がいる。そんな中の一人に話を聞いた。
和室に敷いた座布団にちょこんと座って迎えてくれた、福耳が印象的な男性。こう見えても(?)現在、6000万円の資産を持つサラリーマン投資家だ。
コンピュータ関連の専門学校で講師を務める斉藤学氏(30)は、FX(外国為替証拠金取引)で、わずか1年のうちに50万円の資金を6993万円まで膨らませたスゴ腕の持ち主。
とは言っても、最初からうまくいったわけではなかった。
斉藤氏の投資歴は波瀾万丈。
「最初の失敗を反省して、直感に頼らずチャートを吟味して投資するようにしました。
具体的にはストキャスティクス、RSI、MACDなどのオシレーター系(買われすぎ、売られすぎを計測する指数)の一般的な指標を見て、相場の“過熱”や“冷え込み過ぎ”な状況を把握する。その上で、1年に2~3回ある相場の転換点を見つけて、そこでレバレッジをかけて投資し大きく儲けるという手法です。
僕も普通のサラリーマンですから、昼間は相場に貼り付くことができません。でもこの方法なら中期的な視点で投資できるから、仕事をしながら稼ぐことができたのです」
そして斉藤氏が、「特にサラリーマンにとってFXをする上で重要」だと強調するのが、予想と逆方向に行ったら早めに損切りして損失を限定することだという。これがなかなかできないから斉藤氏のようになれないわけですが……。
「ポジションを持ったら、すぐ逆指値注文を入れておくべきです。あとは、楽観的にならず、むしろ相場に対してマイナスな思考を心がけること。それで冷静な判断ができるようになりました」
今年5月のギリシャ・ショックで1000万円減らしたものの、今も6000万円の資産を持つ斉藤氏。これからもハイペースで殖やしていく予定なのか?
「いえ。来年、税金で3000円近く持っていかれることになります。その分を残しておいて、500万円は自分用に、2500万円は実家の建て替え費用に回そうと思っています。親は『嬉しい』と素直に喜んでくれました」
なんて親孝行。そういえば、斉藤氏が住んでいるのも東京郊外の駅から徒歩10分の2K。家賃は8万円だそうで、FXの稼ぎとは裏腹に、生活ぶりからも堅実さがうかがえる。
FX以外の資産運用も、“長い目”で見て堅実に投資をしているのが特徴。
「7~8年前から純金積み立てをやっています。1グラム=1800円の時からコツコツ始めて、今は4000円近くになっていますから、だいぶ利益も出ています。残高は70万~80万円ほどですね。
あとは、老後の不安があるので個人年金保険に加入しています。将来、800万円を受け取れるような仕組みです。
今後は35歳くらいまでに結婚をしたいと思っていますが、結婚しても賃貸で暮らしていこうと思っています」
今後、不動産投資を始めようと思っているが、資金効率を考えるとマイホームを買おうとは思わないという。
「きちんと損切りする」「投資は中長期で考える」「マイホームより賃貸」そして、これらを一度決めたら貫き通す“マネー哲学”を持っていることが彼の強みなのだろう。
※SAPIO2010年12月15日号