北朝鮮のウラン濃縮施設が公開され、核による恐怖が現実に迫ったかのような報道が多数されたが、「核」と聞くだけで、ステレオタイプの脅威論に走るのがこの国の「核アレルギー」の主症状だ。それは左派も右派も同じである。北朝鮮の核は本当に脅威なのか? なぜ金正日は手の内を明かすような真似をしたのか? 「有事」の今、国際政治における「核」の真の意味を知っておく必要がある。
軍事目的を持った核開発に限定した議論でも、大きく分けて3つの段階があることを冷静に論じる必要があることを、帝京大学准教授の潮匡人氏が解説する。
「第1段階は、核兵器の元になるウランやプルトニウムの抽出・濃縮。これによって初めて兵器化が可能になります。それに続いて、濃縮した核物質を爆弾化して正常に爆発させられるかどうかの実験(核実験)をする段階があります」
すなわち、北朝鮮が今回公開した施設は「第1段階」。ただし、北朝鮮は2006年と2009年に2度のプルトニウム型爆弾の実験を実施したことが確認されている。したがって、すでに「第2段階」に到達していると見ることが妥当だ。
だが、まだ「第3段階」には到達していない。
「抽出・濃縮や核実験以上に技術的に難しいのは、ミサイルの弾頭に搭載するための核の小型化です。同時に、核弾頭を搭載するミサイルの精度も求められる。すでに北朝鮮は日本全土を射程に収めるテポドンや、米本土まで射程に収めるテポドン2を開発していますが、着弾精度は極めて低いとみられている。
もちろん、核爆弾を爆撃機に搭載して日本の上空から投下することは可能ですが、この場合は航空自衛隊や米軍によって、投下前に排除されるのは確実です。純粋に軍事的な見地からいえば、北朝鮮の核は現段階ではまだ『まったく怖くない』と結論づけられるのです」(潮氏)
※週刊ポスト2010年12月10日号