中国では「英雄」扱いされるも、その正体はあまり表に出てこない尖閣諸島で衝突事件を起こした中国漁船の船長。そんな船長と記者は電話でしゃべってみた。以下そのやりとりだ。
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中国歌謡曲の呼び出し音のあと、中年男性の声で「ウェイ(もしもし)」と電話に出た。記者は「A先生?」と船長の知り合いの名前を出して尋ねた。警戒されるのを避けるため、あえて間違い電話を装ったのだ。「はあ? 俺は船長だよ」。主に福建省周辺で使われるミン南語なまりの、ややこもった、聞き取りにくい声だった。
「船長? ひょっとして、あのジャン其雄先生ですか?」
「そうだ」
「それは良かった! 実はあなたとお話がしたかった」
「お前は誰だ? 言葉が聞き取りにくい」
「日本の記者です。船長のことを理解したくて。会いに行きたいのだが」
「できない」
「日本では船長が酔っぱらって海保の船にぶつかったとか、船長は海軍の民兵だとか報道されているが、それが誤解だというなら、その誤解を解くべきでは」
「ダメダメ」……。
5分ほどの押し問答の末、電話は切られた。
※週刊ポスト2010年12月10日号