日本にはものづくり大国としての歴史、特性を生かして、世界シェア100%を誇る会社が多く存在する。彼らの「ガラパゴス」哲学や矜持は、すべてのビジネスマンにとって示唆に富むはずだ。
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神奈川県相模原市のコジマ技研工業(従業員4人、売上高3億円)は焼き鳥、おでんなどに電動や空圧駆動で串を刺す「自動串刺機」のシェア100%企業だ。「YAKITORI」が定着した昨今では、世界中からの需要があるという。小嶋實社長(77)の話。
「馴染みの居酒屋の主人が焼き鳥串を刺すのが大変、と嘆いていたのを耳にしたのがきっかけ。機械ができたらツケはなしにしてくれるといわれまして(笑い)」
当時、国内に同業他社が16社もあった。にもかかわらず普及率が低調なのは、「人の手による串刺し」には遠く及ばなかったからだ。
そこで小嶋社長は焼き鳥屋に通い料理人の手元を眺めた。すると――。
「焼き鳥は各部位の端肉なので単純に刺すと肉の間に隙間ができる。これを防ぐため料理人は縫い針で縫うように食材を波打たせながら串を打っていた。ならば、と私はトレーの底を波打つ形にして食材を安定させてブレをなくそうと考えた」
試行錯誤の末、こんにゃくを30回振っても抜けない万能型の自動串刺機が完成。その後、コンビニのおでん製造などにも携わり躍進を遂げた。ガラパゴスにはガラパゴスの「戦略」がある。
「うちの発想は幾度となく他社にマネされました。でも低価格競争には乗らない。マネされたら、それ以上の製品を作ることに努めて毎年、改良版を発表。食材ごとに交換できるトレーは、現在1100種類を超えています。気づくとライバルは、いなくなっていましたね」
※週刊ポスト2010年12月10日号