国防を考える時、中国人民解放軍の実力を見極めることは極めて重要になってくる。中国人民解放軍の総兵力は224万人、予備役が50万人、さらに準軍事組織である「人民武装警察」が66万人と、その数的規模は世界最大である。また、軍事費においても中国は世界第2位となった。スウェーデンのストックホルム平和研究所によれば、09年度における中国軍事費は849億ドル(約7兆6410億円)に達し、アメリカに次ぐ世界2位。中国国内では軍の存在感が顕著になっている。だが、その中国軍には思わぬ弱点が存在する。20年以上中国の軍事をウォッチしている軍事ジャーナリスト、古是三春氏がレポートする。
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軍事膨張、兵器の近代化を行ないながら、中国軍にはまだ死角がある。
確かに核戦力の面でも、ICBM(大陸間弾道ミサイル)など核の反撃力と抑止力を有するが、通常の戦力だけを見ると攻撃的に周辺諸国へ向ける実力が乏しいのだ。
まず第1に、世界に誇るその兵力はどうか。有名な「一人っ子政策」のため、甘やかされて育った若者が徴兵されている。おかげで苛酷な訓練では、倒れる兵士も続出する事態となっているのだ。筆者は「昔のような精神鍛錬をすると親たちから“虐待だ”と非難される」とある中国軍の幹部がため息まじりに語るのを聞いたことがある。
第2に、莫大な軍事費も実は、兵士への給料と年金で兵器開発まで回らないというのが実情だ。224万人の兵士の給料と引退した軍人への年金。冷戦期に軍で働いていた大量の幹部がいっせいに引退の時期を迎え、彼らに払う年金が悩みの種になっている。さらには福利厚生のための引退者住宅の建設が急速に進められ、これらも装備更新の予算を食って、軍の近代化を遅らせている。
※SAPIO2010年12月15日号