水谷研治氏は1933年名古屋市生まれ。名古屋大学卒業後、東海銀行入行。同行専務取締役を経て、東海総合研究所社長などを歴任。現中京大学名誉教授。水谷氏はこう指摘する。
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個人、企業を問わず、借金をしたら返済するのは世の常識である。当然、借金は返済可能な範囲でなければならない。銀行員の立場から借金の限度額をいうなら、個人なら年収、企業なら売上のそれぞれ2分の1まで。企業の場合は、甘く見積もっても売上と同額までが限界であり、これは国の場合にも当てはまる。
現在日本の借金は637兆円。これ対して収入は、税収、その他で約40兆円。ただし、地方交付税の10兆円を差し引くため実質30兆円である。日本は、“売上”の20倍も借金をしている。
さらに利払いに10兆円、地方への支出に7兆円、一般支出に54兆円―毎年の支出は合計70兆円を超える。年間の赤字は40兆円以上になっている。赤字分だけ借金が増えるため、このままでいけば10年後の2020年には国の借金が1000兆円を超える。
我々は財政破綻した夕張市を反面教師としなければならない。国家財政は夕張市とは比べものにならないほど悪いのである。膨大な借金を返済するチャンスはデフレの今をおいてほかにはない。行政の無駄を省くなどという生ぬるいやり方では追いつかない。日本のとるべき道はただひとつ。即刻消費税を上げることだ。
20年前なら消費税を10%にすれば財政問題は完全に解消した。現時点では55%の引き上げが必要であり、最低でも消費税を20%上げて、それを全部、財政改革に使わなければならない。重要なのは先送りすれば増税の率はさらに上がるということだ。
膨大な借金を返済するためには、3度の飯を食べている余裕はない。朝飯抜きで頑張るという程度では甘い。夕飯を抜き、明け方まで懸命に働き続ける覚悟が必要なのだ。
子供や孫をそんな目に遭わせるわけにはいかない。大人は自分たちの作った借金を残して死ぬようなまねをしてはならない――。
※週刊ポスト2010年12月10日号