多様化する紛争、危機にどう対処するか。テロ、邦人救出、不審船対策と、通常戦力では対応し切れない事態に対応する自衛隊「特殊部隊」の実力を、ジャーナリスト笹川英夫氏が報告する。
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海上自衛隊は、SBU(特別警備隊)と称される特殊部隊を有している。90年代後半、頻発する北朝鮮の対日工作船の領海侵犯事件に対応するため、江田島(広島県)を拠点につくられた海自初の特殊部隊である。
高速ボートや、ヘリコプター、時には潜水で不審船に近づき、速やかに乗船するや、敵船を無力化する。これがSBUの任務だ。例えば尖閣諸島沖に、不審船が出没した場合、日本で最も威力を発揮するのが、この特殊部隊なのだ。
部隊は、海上自衛隊内でも厳しい訓練や任務で知られる水中爆発物処理隊からの出身者(水中処分員=EOD)が多いとされ、海の特殊部隊らしい高度な潜水能力、高い身体機能にとどまらず、他国の船舶での捜索活動などの任務から語学能力も要求される。隊員になるためには、文武両面での高いハードルが設定されているのだ。
海上、水中でのあらゆるケースを想定し、爆弾処理、潜水による水中浸透、空挺自由降下など、その訓練は特殊かつハードだ。
アメリカ海兵隊は、緊急事態に即応する部隊として、海軍最強と言われるシールズの別働隊「ファスト」を創設した。その分遣隊、40名が横須賀に駐屯しているのだが、私はそこの中隊長にSBUについて尋ねたことがある。実はファストとSBUは、頻繁に合同訓練を行なっているのだ。
米国軍人は、スキルに関してお世辞を言わないことで有名だが、その隊長は断言した。
「彼ら(SBU)のスキルは、我々と同等だ。すべての訓練について能力の高さに、いつも驚かされている」
※SAPIO2010年12月15日号