国内

大前氏 日本の水道事業を民営化すれば水道代は半分になる

 世界の資源獲得戦争は、石油や天然ガス、あるいは今話題のレアアースやレアメタルにとどまらない。我々の生活により身近な「水」をめぐって、熾烈な争奪戦と、新たなビジネス競争が繰り広げられている。日本の「水」をめぐる実態を大前研一氏が解説する。
 
 * * *
 いま水道料金は、最も高い自治体と最も安い自治体では何倍も違う。水の美味さも違う。だが、安くて美味しいからといって、他の自治体から水を買うわけにはいかない。水利権の問題があり、水道管もつながっていないからだ。

 しかし、そういう「悪しき慣行」は、もう終わりにしなければならない。日本は水道水の料金とクオリティを全国で揃える方向に行くべきであり、そのためには水道事業を集約して広域化するしかないのである。

 さらに言えば、日本の水道水は「塩素」にこだわりすぎているという問題がある。日本は法律上、水道水には塩素を入れて消毒・滅菌しなければならない。だが、オランダなどでは塩素ではなくフッ素を加えているし、アメリカではフッ素と塩素を両方使っている。

 フッ素の利点は虫歯の予防ができることである。だからオランダ人やアメリカ人は虫歯が非常に少ない。ところが、日本では水道水にフッ素を加えようとすると、歯科医師の経営にマイナスの影響が出るといった理由からか、実現できていない。

 要するに、日本の「水」は上から下まで利権だらけなのである。民主党が「国民の生活が第一」と言うなら、こうした「水利権」や「塩素」にまつわる利権にもメスを入れるべきだろう。

 その具体的な方策は、水道事業の官民連携促進だ。もはや市町村が水道事業を抱えている必要はない。同じ公共インフラの電気は民営化しているのだから、行政の肥大化を避けるためにも、水も官民連携、場合によっては民営化して、水メジャーをはじめとする世界最強の会社に下水道や農業用水、工業用水も含めて運営を任せればよいのである。もし、その会社が汚い水や高い水を出したら、自治体の権限で別の会社に変えればよいだけのことである。

 民営化のメリットは、行政の肥大化を避けることだけではない。

 水道事業を売却すれば、市町村にどんとお金が入ってくる。それで市町村の財政は大いに助かるし、おそらく水道料金も半分以下になるだろう。周辺の市町村を5つぐらい一体化して事業を運営すれば、近代化の遅れている下水道なども一気にレベルが高くなると思う。

※SAPIO2010年12月15日号

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