「子育ても手伝ってくれるし、結局ママに頼っちゃう」と娘。「夫より、お友達より娘とおしゃべりしたり買い物に行くほうが楽しいわ」と母親。仲がいいのはいいことだけれど、結婚して娘が家庭を持ってもそのまま、いつまでもべったり。20代ばかりか、40代の娘とその母世代にもそんな関係が増えつつある。“友達母娘”といえば、聞こえがいいが、あまりに依存し合ったその関係は、やはりどこか違和感があって……。
そもそも「一卵性母娘」という言葉が世に出てきたのは、1950年代の後半ごろから。歌手の故・美空ひばり(享年52)と母親の加藤喜美枝さんの関係が「一卵性母娘」の語源とされている。美空ひばりという不世出の才能を持った娘と、娘を守り成功に導くことにすべてをかけるステージママ。喜美枝さんはひばりが結婚した際には、ひばりの夫の小林旭(72)と3人で同居した。
「私にとって不幸だったのは、ひばりが結婚したとき。また幸せだったのは、離婚したとき」と喜美枝さんは、公然といい放った。
同じケースが宮沢りえ(37)母娘だ。結婚して長女を産んだことで母から脱却した感はあるが、彼女の場合、婚約騒動や芸能活動、私生活に至るまで、常に母親の存在があった。それが原因で摂食障害になったともいわれた。
ひばりやりえが、母親たちの願望の一部を代わりに担わされたのに対して、松田聖子(48才)や、以前は娘と仲のよかった安達祐実の母・有里さん(53)の場合は、若くて素敵で、友人に自慢できる母、という存在だった。
おしゃれや楽しみを共有できる「友達母娘」。多くの母娘が似たようなファッションに身を包み、渋谷の街を闊歩する姿も見られた。「一卵性母娘」というのは、外見や趣味が似ていて、同じような考え方をする母娘を指すが、おもに50才前後の母親と10代後半から20代の娘を指していうことが多い。
しかし年々、家にとどまる娘などパラサイトシングルが増え、30代、40代の娘でも、高齢者になった母と密接な「一卵性母娘」関係を保っているケースも出てきている。『一卵性母娘な関係』の著書がある臨床心理士の信田さよ子さんが話す。
「昔の一卵性母娘の生きる道は娘の親としてだけ。年を取った自分の人生に唯一彩りとなってくれるのが娘でした。ところがいまの一卵性母娘の関係は平和的で、母と近い存在の娘が、そこそこ経済力のある母親とショッピングし、話をし、いちばんわかり合え、共有する状況を楽しめる関係なのです。けっして病理現象として出てきたのではなく、社会の変動に対応する形で出てきた家族の変化なのです」
※女性セブン2010年12月16日号