中国との尖閣問題に続き、ロシア大統領のメドベージェフが国後島を訪問するなど、近隣諸国が一斉に日本の領土を土足で踏みにじっている。国際ジャーナリストの落合信彦氏は、日本政府の対応を見ていると、菅直人以下、この政権の人間は古代ローマの時代から伝わる「汝、平和を欲するなら、戦争に備えよ(Si vis pacem, para bellum)」というラテン語の格言の意味を、誰一人理解していないことがよくわかると言う。同氏が現政権の問題点を指摘する。
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現政権は「冷静に対処する」と繰り返しながら何も効果的な手を打てない。そして相手をますますのさばらせるだけ。単なる腰砕けの外交であり、国益を損なう結果しか生まない。はっきり言って今の日本に外交は存在しない。
国際政治の場での大原則は、「他国に舐められないこと」だ。中国に弱腰の対応をしたら、ロシアまでそこに付け込んでくるのは当然のこと。相手が中国のような“ならず者”であればなおさらのことである。
別に、日本が小さな国だから舐められているわけではない。日本を代表する政治家の質が悪すぎるからだ。その証拠に、日本よりもはるかに“過酷な環境”の中で領土を守り続けている国家がある。
イスラエルである。
日本の四国より少し大きい領土しか持たないこの国は、周囲を敵対するアラブ国家に囲まれている。それでも、1948年の建国以来、領土を守り続けてきた。かつて女性首相だったゴルダ・メイアはこう言っている。
「私たちには秘密の武器がある。それは、『他に行くところがない』ということだ」
この危機意識が、日本とイスラエルの根本的な違いと言えるだろう。彼らは1cmでも領土を譲ったら、アラブ諸国が次は10cm、その次は1m、と侵食してくることになることをわかっている。
※SAPIO2010年12月15日号