パメラ・ドラッカーマンさんは、ウォールストリートジャーナル退職後、フリージャーナリストとして3年間にわたり、世界10か国12都市で実際に不倫をしている人々などを対象に調査を行なった人物。そんな彼女がロシアの不倫事情を語る。
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「不倫は今では絶対に必要な、なくてはならない人間関係。義務なんです」―ロシアの有名な精神分析医の女性はそう主張しました。
ロシアには信頼できる調査はあまりありませんが、サンクトペテルブルクで1996年に行なわれた世論調査によれば、既婚男性の約半数と既婚女性の4分の1が浮気をしたことがあると答えています。ロシアの都会に住む人々は、先進諸国の中でもっとも不倫率が高く、人々が浮気を自慢する国なのです。彼らの言葉には「不倫をしていない人はダメ人間」のような響きがありました。
ロシアに不倫が多い理由は、共産主義時代に抑圧されていたタガが外れたことと男性が少ないことが挙げられます。1980年以降、男性の平均寿命は65歳から58歳に下がり、65歳のロシア人は、女性100人に対し、男性はわずか46人です。
40代の独身女性に話を聞いたところ、「既婚男性と付き合わなかったらデートの相手がほぼ皆無になってしまう」とのこと。モスクワ劇場の団員をしているサーシャは、身長150センチで短足の太鼓腹という男性でしたが、職場の女性と片っ端から関係をもっていました。「隙あらばって、いつも思ってる。それって男の性だろ」と。女性にとって、未婚男性やアル中でない男性は、ロマノフ王朝の豪華な宝石と同じくらい滅多に手に入らないものなのです。
モスクワ滞在中、ロシアの人気女性誌『コスモポリタン』が、「ボーイフレンドの存在を夫に気づかれない方法」を特集していました。不倫をすると女性はスリムになって日々の生活にハリが生まれるそうで、そこには罪悪感のかけらもありませんでした。
※週刊ポスト2010年12月17日号