長引く世界的な不況の一方で金価格は史上最高値を更新し続けている。今後も金価格の上昇は続くと予想する松藤民輔氏は、さらなる押し上げ要因を指摘する。
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昨今の投資環境の中で注目を集めているのが、主婦層を中心にした日本の個人投資家である「ミセス・ワタナベ」だ。
この言葉は、FX(外国為替証拠金取引)に多くの日本の主婦らが参加するようになったことから、欧米金融機関の間で、機を見るに敏な日本の個人投資家を指す隠語として使われている。取引量は増加しており、機関投資家も無視ができない存在となっている。
「ミセス・ワタナベ」たちが今後は金に向かい、さらなる価格上昇の先兵となると私は見ている。
なぜならば“彼女たち”が持っている円は、過去30~40年間、ドルに対して価値を上昇させ続けてきた唯一の通貨である。日本円ベースの金価格は1980年に記録した最高値と比べてもまだ割安だ。
円以外の通貨では史上最高値圏で買わなければならない金を、日本円の持ち主であるミセス・ワタナベは30年前の最高値より割安で購入できる。金価格の上昇は、そんな恵まれた投資環境にあるミセス・ワタナベの参入によってさらに加速するだろう。
もちろんこれは、日本人は特に、金投資で有利ということでもある。
※SAPIO2010年12月15日号