「隣家が3階建てに改築するらしいのですが、日照やのぞきが心配です」…そんな相談が弁護士・竹下正己氏のもとに寄せられた。
【質問】
隣家が3階建てに建て替えるようだという話を近所の人から聞きました。3階建てになると、わが家の日当たりが悪くなるとともに、家の中をのぞかれる心配もあります。こうした問題についての対策は、どこまで聞き入れられるものでしょうか。参考事例などがあれば、あわせてアドバイスください。
【回答】
建物による日照被害が受忍限度を超えると、不法行為になります。受忍限度を考える上で重要な点は、地域性です。良好な日照時間を確保するのが期待される低層住宅地では、受忍限度は低くなります。
また、現在享受している日照が損なわれる程度も大切です。隣家の3階建ての必要性、必要でも近所に影響が出ない設計による被害回避の可能性もポイントです。裁判などの争いになった場合には、交渉経緯などの要素も考慮されます。
建築基準法では低層の住居専用地域で、軒高7メートル超か3階建て建物を建築する場合、地盤から1.5メートルの高さの隣接地域内の一定の場所で、冬至に一定の時間以上の日陰を作ることを禁じています。同法に違反し隣家に日照被害を与えた建物に、完成後その一部の取り壊しを命じた裁判もあります。
ただし、建築法規に違反しないからといって、受忍限度内とは限りません。公法上の規制は一般的、概括的なものであり、受忍限度は個別的に判断されるからです。
南側に7メートル未満の2階建てが予定されていたものの、完成すると冬至には日照が全く奪われるという事例で、一部の建築禁止を認めた裁判例もあります。しかし、いったん完成したあとで同種の被害が生じたとして、取り壊しを求めた裁判で、受忍限度を超えているが、その程度が著しいとはいえないとして、慰謝料の支払いを命じたものの、取り壊しは認めなかった例もあります。
隣家からのぞかれる心配についてですが、民法では、地域に別の慣習がない限り、境界から1メートル以内に窓やベランダを設けるときには、目隠しをつけることを義務付けています。
隣家の人に建築計画を聞いた上、建物と日照被害の有無や、窓の位置を確認して、建築着手前に交渉することをお勧めします。
※週刊ポスト2010年12月17日号