一代で武富士を築き2006年に亡くなった武井保雄元会長。その武富士も過払い金返還問題で4336億円もの負債を抱えて窮地に立たされている。かつてワンマン経営者として注目を集めた武井元会長の生き様を、ジャーナリスト・山藤章一郎氏が追った。
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支社副社長を務めたM氏は武井会長についてこんなエピソードを紹介してくれた。
「社員を信用するな。外の者も信用するな、が口癖でした。それに倹約家というか吝嗇(りんしょく)家。
経費節減で『電気消せ』はあたりまえ、コピー機は奇数階だけにする。いちいち階段上り下りしてフロアを移動しなければならないから、必然的にコピーが減る。
とにかく、カネのことしか考えない。カネ貸しですからね。そのトップですからね。アタマにあるのはカネのこと、女のこと。貸付残高を増やして、確実な収益をめざす。女の部屋には入り浸り。
そして、昼めしは糖尿病だからサンドイッチ。でも正月は、どんと太っ腹になった。会長の誕生会兼新年会。杉並区の自宅〈真正館〉に、100人から150人ほどの幹部が集まります。
そこで競馬ゲームをやる。競馬場になってるゲーム盤をおもちゃの馬がトコトコ走るんです。会長がどかんと100万円張って、100数十人の男女に、『おまえらも張れ』って。そしてハンデ持たせてわざと勝たせてくれる。
勝った奴に、『いまなら、もうソープ開いてるだろ。そのカネでおまえら行ってこい』って」
※週刊ポスト2010年12月17日号