ライフ

中国格安航空はCAの号令で乗客が体操 終わると客は拍手

「上海まで4000円」(春秋航空)、「マレーシアまで5000円」(エアアジアX)など、ローコストキャリア(LCC)と呼ばれる格安航空が注目を集めている。そこで今年7月から茨城と上海を結ぶ「春秋航空」に本誌記者が体験搭乗してみた。本誌記者の体験記は以下の通りだ。

* * *
最初の関門は公式HPから行なう「チケット予約」だった。値段はリアルタイムで変わる。往路2万6000円、復路4000円の計3万円のチケットを予約すると、燃油サーチャージなどが加算され計3万7010円となった。だが、中国語のHPゆえ、手続きに戸惑ってしまった。日本語ページもあるが、表示されるのは少し変な日本語だ。決済後に届く確認メールも〈春秋航空のチケットを注文するの 確認情報〉といった件名がつく。

ともあれフライト当日。チェックインカウンターの客は中国人ばかり。既に中国に来たような喧噪だ。そこに突然、女性客の金切り声が響く。荷物の重量制限に引っかかった様子。同航空では15キロまでという制限があり超過1キロ1500円が徴収される。顔を真っ赤にしてカウンターを叩く。すると、今回は超法規的措置が発動されたのか、オマケしてもらうことで決着が付いたようだ。客は何事もなかったかのようにゲートを通過していた。記者も飛行機に向かう。

当日はあいにく横殴りの雨。傘は荷物と一緒に預けてしまったため、飛行機まではズブ濡れで外を歩く。むくれて機内へ入ると、ピンクのチャイナ服のCAに恭しく迎えられる。頬を緩ませながら、予約した窓側の席に辿りつく。が、一難去ってまた一難。機体はかまぼこ型の形状のため、頭上に圧迫感を抱く。さらにどこを探してもリクライニングボタンがない。記者はこの姿勢で着陸まで耐えるのか、と嘆息した。一方、周囲は修学旅行のバスのように中国語が賑やかに飛び交っている。

25分遅れで上海に向けて離陸。機内がグラついた。そしてCAのアナウンス。「悪いの天気によって、飛行機は揺れているのですからシートベルトを締めてください。ありがとうございました」案内は中国語と日本語。常に文末に「ありがとうございました」が添えられる。「謝謝」を直訳しているのか。「飲食物は運賃に含まれていないのですから、いまから機内販売をいたします」記者の前に、幾度もCAが押すカートが回ってくる。「食べ物はいかがですか」“出血大サービス”といわんばかりの元気な声が機内に響いていた。

着陸1時間前。CAが突然マイクで号令をかける。

「イー、アル、サン、スー、アル、アル、サン、スー」――これが噂の“春秋体操”。乗客は「まってました」と、手を組んで伸ばしたり、げんこつをぐるぐる回したり。これでエコノミー症候群も予防できるというわけだ。日本人乗客が完全に置いてけぼりにされるなか、ひとしきり終わると最後に乗客から大きな拍手が沸いた。

そして上海浦東国際空港に定刻通りに着陸。3時間前とはうってかわり空はカラリと晴れ上がっていた。当初危惧された安全面は、まったく問題がなかったことにほっと胸をなでおろす。聞くと、格安といえども大手と同じ安全基準をクリアしており、最新機材を使うLCCも多いのだという。ただし、本誌記者の感想といえば、直角の座席、機内販売や件の体操でおちおち睡眠もとれず疲労を募らせた気もする。価格をとるか、乗り心地をとるか。まさにハムレットの心境を味わわせてくれるのがLCCだと、ここではまとめておこう。

※週刊ポスト2010年12月17日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
“鉄ヲタ”で知られる藤井
《関西将棋会館が高槻市に移転》藤井聡太七冠、JR高槻駅“きた西口”の新愛称お披露目式典に登場 駅長帽姿でにっこり、にじみ出る“鉄道愛”
女性セブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン