脳卒中を発症すると、命は助かっても後遺症としてさまざまな障害が残ることが多い。上肢・下肢の筋肉が緊張し過ぎるつっぱり(痙縮)は、手足が動きにくい、あるいは勝手に動く。
痙縮が続くと、筋肉が固まって関節の動きが制限される拘縮が起こる。今年10月、ボツリヌス毒素療法が保険承認された。筋肉に直接注射することで、筋肉を緊張させる神経の働きを抑制する効果がある。
わが国の脳卒中の死亡者数は、がん、心臓疾患に次いで第3位となっている。また、命が助かっても運動障害、言語障害、感覚障害などさまざまな後遺症が残る。上肢や下肢の筋肉が緊張し過ぎて、手が曲がったまま開きにくい、足が伸びたまま動かなくなるといった症状が起こる。
これが痙縮で、多くは片マヒ(半身マヒ)と同じ側の手足に現われる。さらに筋肉の緊張で関節の動きが制限され、拘縮が起こることもあり、日常生活に大きな影響が出る。この脳卒中後の痙縮に対し、ボツリヌス毒素を筋肉に注射する治療法が、この10月、保険承認された。
臨床試験責任医師で、徳島大学医学部神経内科の梶龍兒教授に話を聞いた。
「ボツリヌス毒素は食中毒を起こすボツリヌス菌が作り出す天然のたんぱく質で、A型からG型までがあります。A型には受容体にくっつきやすい性質があり、結晶を注射すると筋肉を収縮させる物質であるアセチルコリンの放出をブロックします。これにより筋肉の緊張を和らげることができます」
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2010年12月17日号