12月7日に港区・グランドプリンスホテル高輪で突如開かれた市川海老蔵(33)の謝罪会見。暴行事件渦中の当事者登場に、マスコミは色めき立った。入場制限はなく、約500人の報道陣が集まる空前の規模となった。「質問がなくなるまでやるのが本人の意思」として、延々と会見は続けられた。
しかし、「海老蔵ははたして手を出したのか」「愚連隊とはどのような関係なのか」など、皆が知りたい事件の核心部分への質問に対しては、「捜査中のためお答えできません」「記憶にございません」を繰り返すばかり。まるで、この間「二言だけいっておけばいい」と軽口を叩いて職を追われた法務大臣のような有様だったのだ。
それでもさすがに歌舞伎界の大名跡を継ぐ男である。
会見での海老蔵の“芝居”は完璧だった。冒頭、松竹の迫本淳一社長が話す際にはじっと目を閉じ、ときおり眉間に皺を寄せ、無言のまま表情に反省の色を浮かべる。
そして自らがマイクを持つ段になると、会見テーブルの置かれた壇上からわざわざ下に降り、腰を深々と折って頭を下げた。実に46秒間微動だにせず、指先までピンと緊張感が張り詰めていた。
記者からの質問を受ける間も、水を飲むときにはまるで茶道の御点前のように、右手で持ち上げたグラスの下にそっと左手を添えた。記者の質問を聞くときは、相手から目を離さず、やや前かがみになって神妙な顔で耳を傾ける。
「高橋美登里きもの学院・礼法教室」の高橋美登里学院長は、海老蔵の所作についてこう語る。
「まさに完璧でした。彼がした礼は、立礼の中でも最も丁寧な“最敬礼”というもの。きちんと手で膝頭を包むようにしていました。形だけでなく、表情や姿勢、指先まで神経が行き届いていた。あの若さであれだけの振る舞いのできる方は、めったにいない」
「パンツを脱いで土下座」「灰皿でテキーラを飲ませた」など、真偽はともかく下品この上ない話題を振りまいた当事者とは思えない品行に、同情的になる記者も多数いたという。
※週刊ポスト2010年12月24日号