国際情報

落合氏「日本は中国の急所を握って米国に伝える戦略とるべき」

 中国との尖閣問題に続き、ロシア大統領のメドベージェフが国後島を訪問するなど、近隣諸国が一斉に日本の領土を土足で踏みにじっている。国際ジャーナリストの落合信彦氏は、日本政府の対応を見ていると、菅直人以下、この政権の人間は古代ローマの時代から伝わる「汝、平和を欲するなら、戦争に備えよ(Si vis pacem, para bellum)」というラテン語の格言の意味を、誰一人理解していないことがよくわかると言う。同氏が現政権の問題点を指摘する。

 * * *
 日本の政治家に、正確な情報を有効に使える人間がいるかと問われれば、一人も思い浮かばない。これは、有権者の一人ひとりの危機意識の低さにも問題がある。
 
 イスラエルでは、ヨム・キプル戦争(第四次中東戦争)の時、アラブ諸国の奇襲の情報を持っていたのに判断を誤り、緒戦で敗北を喫したメイア首相のような指導者は失脚を免れない。有権者は「この政治家は領土を、国民の生命と財産を守ることができるか」という基準で判断し、票を投じる。それは即ち、「情報を適切に扱える判断力を持つ人間か」が問われているということでもある。
 
 情報は「他国に恩を売る」という使い方もできる。かつて、伝説的なモサドの元長官のイサー・ハレルは私のインタビューにこう答えている。
 
「モサドが(冷戦時代に)西側諸国の安全に果たした役割は、イスラエルという国のサイズに比べてはるかに大きかった。具体的には私の口からは言えないが、あなた方が考えている以上に、自由主義諸国はモサドの恩恵をこうむっていると断言できる」
 
 補足すれば、ソ連のフルシチョフが行なった「スターリン批判」の演説をテープ録音し、CIAに渡したのはモサドの功績である。表向きはCIAの手柄となっているが、実際は違う。こういった積み重ねがあるからこそ、アメリカは常にイスラエルの支援に回ることになる。
 
 日本はそういった努力を全くしていない。中国の“急所”を入手し、アメリカに伝える。それができていれば、問題が起きてから、「尖閣諸島は日米安保条約によって守ってもらえるんですよね?」などと慌ててクリントンに泣きつく必要もなかった。
 
 日本の政治家はよく「戦略的互恵関係」などと口にするが、情報を持たない国が「戦略」など立てられるわけがないし、そんな日本と本気で「互恵」する関係になろうという国もない。国家の生存のために何が必要か一刻も早くそれに気付かなくてはならない。

※SAPIO2010年12月15日号


トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン