財務官僚に挑発されても何もできない菅政権の無能さが混乱を招いている。こういう政権が税制をいじるのは危険である。象徴は消費税だ。官僚に尻を叩かれた菅側近はこんな言い方をする。
「消費税引き上げから逃げているという印象を与えると、支持率はますます下がるし、財源なきバラ撒き政治だと国会で批判される。来年の通常国会では堂々と引き上げを打ち出して勝負に出る。最近、総理が財界首脳にもそう伝えた」
これで啖呵を切ったつもりだから呆れる。それで喝采するのは、せいぜい財務事務次官の天下りを受け入れ、社説で「消費税を上げよう」と煽っている読売新聞くらいだろう。「財源を見つけて来い」と官僚にスゴまれたことで、自民党以上に「取りやすいところから取る」という発想が目立っている。
給与所得控除の削減など考え違いも甚だしい。給与所得控除とは、事業経費が認められないサラリーマンに対する「見なし控除」のことである。その額を論じる前に、「10・5・3(トーゴーサン)」と呼ばれる“隠れ免税”を改善すべきだろう。サラリーマンは所得の10割をガラス張りで捕捉されており、1円たりとも節税の余地はない。これが自営業者は5割、農家は3割しか捕捉されないため、実際の所得に比べて税額は少ないとされる。
農家がハワイ旅行に出かけて「果樹園視察」と称し、商店主がベンツを「配達用」と申告している実態を見れば、「サラリーマンの経費」を圧縮しようという考えがいかに不公正かは明白だ。矢継ぎ早に出てきた「たばこ増税」「第3のビール増税」「ペット税」「軽自動車増税」なども同じ発想だ。
※週刊ポスト2010年12月24日号