暴行事件発生後、日を追うごとに海老蔵に不利な報道が増え続けていた。「灰皿でテキーラ」や「海老蔵とは別の血痕の発見」などはその典型だ。
逮捕状の出ているR(26)の先輩格にあたる28歳男性の「鼻部打撲・上口唇裂傷」と「顔面打撲・頸椎捻挫」あわせて全治4週間の診断書がテレビやスポーツ紙などに公表されたのも、Rが属する愚連隊連合「K」に関わる人物からもたらされたものとされる。
あるキー局関係者がいう。
「ほとんどの局が『K』がらみの情報源をネタ元にしていた。暗躍していたのは、メディア業界に関わるAと、芸能系にコネクションを持つBという2人の男です。彼らは現場に居合わせた人間や、Rと親しいという人物をマスコミに紹介したりしていた。日テレ、TBS、テレ朝の記者たちはかなり食い込んでいたらしい。“灰皿でテキーラ”もそう。裏が取れないうえに、ほとんどがRに都合のいい情報で眉唾物も多かった」
AやBからの情報が疑わしいと知りつつも、キー局をはじめマスコミ各社には、それに頼らざるを得ない事情があった。
あるスポーツ紙記者がいう。「事件取材の場合、どんな些細な手がかりにも首を突っ込んでいくのが当たり前ですが、今回は相手が愚連隊ばかりということで、相当タチが悪かった。“Rの携帯番号”だと聞いて電話をかけてみると、まったく無関係の不良が出て、“ぶっ殺すぞ”と脅された記者もいた」
「K」の関係者がたまり場にしている新宿や吉祥寺のクラブに取材に行ったところ、たまたま居合わせた不良たちにニラまれ、あわやリンチ寸前となった記者の情報も入ってきている。取材対象者がアウトローだけに、いくらバイアスがかかっていたとしても、数少ない情報源に頼らざるを得なかったようだ。
「出てくる“証言者”は、実際に現場にいたのかどうか怪しい人間ばかり。『K』の関係者が“容疑者の男のインタビューをとらせてやる”といって100万円単位の金額を複数の局にふっかけてきていたようだ」(前出・キー局関係者)
※週刊ポスト2010年12月24日号