内部告発サイト「ウィキリークス」をめぐってはアサンジ代表の逮捕に注目が集まったが、日本のマスコミはその暴露内容についてはそれほど大きく報道していない。しかし、実際には、武器輸出三原則の見直しを始め日本外交がアメリカのいいなりになっている証拠が明かされているのだ。
日本の大マスコミがこれだけ重大な問題をほとんど無視している理由は、彼らもまた歴代政権の「対米従属政治」を後押ししてきた“一味”だからである。
特に、対米従属派の筆頭格である読売新聞などは、ヒステリックなウィキリークス批判を展開した。12月1日付社説では、「内部告発サイト 公益性欠く米外交文書の暴露」と題し、こう論じた。
〈25万点もの公電を順次ネット上で公開する手法は、個々の文書の内容を精査し、公開の意義や目的、影響などを慎重に検討した上での行動とは言い難い。国民ののぞき見趣味に迎合するかのような、無責任な暴露と批判されても仕方あるまい。(中略)膨大で多様な情報があふれるネット時代だからこそ、メディアも含め情報を公開する側は、これまで以上に自らに厳しく、抑制的でなければならない〉
メディアが情報の公開に「抑制的でなければならない」というのは滑稽ですらあるが、記者クラブに安住し、政府や権力者の了解を得た情報ばかり発信する彼らの姿勢は、なるほど「抑制的」といえなくもない。
また、日本の大手メディアは、アサンジ代表が「強姦容疑で逮捕」と報じているが、実際には「コンドームをつけずにセックスした容疑」である。スウェーデンでは女性の求めに応じてコンドームをつけないと違法なのだ。
いかにも「逮捕するために作られた容疑」に見えるが、日本の大マスコミは、ここでも権力側の発表に丸乗りだ。
同紙は、直前の11月29日付社説では、「沖縄知事再選 普天間移設の前進を追求せよ」と題して、普天間飛行場の県外移設を主張して当選した沖縄の仲井真弘多氏について、〈昨年まで辺野古移設を支持し、今も県内移設への反対は明言していない〉と苦しい解釈をしたうえで、〈菅政権は、日米合意を前に進めるという重い責任を負っている〉と結んで、要するに「対米従属を進めよ」と迫っていた。
その意味では、この新聞は論理が一貫していてわかりやすいが、目の前で示された有権者の選択には、もう少し謙虚でもいいはずだ。
※週刊ポスト2010年12月24日号