4日、日刊スポーツ(一部地域版)が1面で「ヤクルト身売り」と報じた。結果的に記事は「誤報」だったわけだが、ヤクルト側にも事情はある。
この5年間で、神宮球場の観客動員数は約30万人減った。「プロの試合より早慶戦の方が客が来る」(ヤクルト関係者)と陰口を叩かれ、今季の赤字は約20億円と見られている。親会社であるヤクルト本社の昨年度の純利益は132億円。経営状態は良好で、これを身売り否定の根拠の一つとした。しかし、現場からは逼迫した様子が伝わってくることも事実だ。
このオフ、林昌勇が3年14億円(推定)という大型契約を結んだ。ヤクルトの選手の総年俸が約20億円(2009年)だから、実にその4分の1。このオフ、ヤクルトはデラクルスら複数の外国人選手を解雇しているが、その理由が「資金難」であることを担当者が明かしている。
「今回の身売り報道があったことで、ヤクルトの選手たちは契約更改で要求を出しにくくなったでしょうね。頑張った選手には気の毒としかいいようがない」
野球評論家の江本孟紀氏は苦笑しながら、こう付け加えた。「でも怖いのは、誤報だったのに、球界では未だに“あり得る話だ”という空気が拡がっていることです。それだけ今の球界は危機的状況にある」
※週刊ポスト2010年12月24日号