高齢者の再雇用をめぐる裁判で、11月26日、京都地裁において「画期的な判決」が出た。
倉庫会社に勤務していた滋賀県大津市の男性(62)が、2008年6月に60歳で定年退職した後、1年契約の嘱託社員として再雇用されたが、会社側は業績不振を理由に1年で雇い止めした。同社は64歳まで1年ごとに雇用契約を更新する就業規則を定めていたことから、男性はそれが解雇権の乱用に当たるとして、会社に賃金支払いと雇用継続を求めて提訴。京都地裁は「雇用継続への期待には合理性がある」「雇い止めの回避努力を尽くしたとはいえない」との判断を示し、男性側の請求を認めた。
法曹関係者によれば、定年後の再雇用で、雇用が継続されることを期待していいという「期待権」を認めたのは全国初だという。
訴訟を担当した原告側弁護士は判決をこう評価する。
「原告の男性は住宅ローンを抱えていたので雇い止めされたら払えなくなり、自己破産する可能性もあった。年金は60歳支給とされていたのに、国の都合で65歳に遅らされ空白が生じているわけで、何らかの代償措置は必要です。そのために改正されたのが高齢者雇用安定法で、今回の判決で、定年後の労働者の働く権利が確保されたことになる」
と意義のある判決であることを強調する。
判決の基準となったのが2006年に施行された改正高齢者雇用安定法。同法では、企業に「定年を65歳に引き上げ」「65歳までの継続雇用制度」「定年制の廃止」のいずれかの制度を段階的に導入することを義務づけている(現行は64歳まで。2013年4月から65歳に引き上げ)。
この法は企業に制度導入を義務づけただけで、個別の労働者を再雇用する義務を課したものではないと解釈されてきた。しかし、判決では就業規則に「一定基準を満たす者は再雇用する」と明記されていたために、企業側に雇用の義務が生じると判断されたのだ。
※週刊ポスト2010年12月24日号