12月15日に東京都議会で可決された「都青少年健全育成条例」の改正案が、大きな波紋を呼んでいる。
2010年3月に提出された改正案では、「『非実在青少年』(18才未満の登場人物)の性行為を、みだりに性的対象として肯定的に描写した漫画など」を「自主的な区分販売」とし、成人コーナーにしか置かないようにするよう自主規制を求めた。しかし、「非実在青少年」の言葉が「基準があいまいすぎる」と漫画家や出版社側が猛反発。
すると都は、改正案を修正してこの12月に再提出。修正案では「非実在青少年」の言葉が削除される一方、「刑罰法規に触れる性行為や、婚姻を禁止されている近親者間の行為を、不当に賛美・誇張して描いた漫画など」の表現が加えられた。さらに「強姦などの著しく社会規範に反する性行為を不当に賛美・誇張して描いたもの」を強制的な区分販売にした。
だが、この修正案に対しても、漫画家や作家、弁護士たちからは「改悪」の声が続出。何をもって、「不当に賛美・誇張」する表現かどうかを決めるのかという点があいまいなままであることを問題視している。さらに、山口貴士弁護士がこんな指摘をする。
「非実在青少年という文言は消えたが、同様の規制は残っています。しかも、青少年以外による刑罰法規に触れる性交や近親相姦等も対象になっており、規制範囲は拡大しています」
さらに、こんな問題点もあるという。
「犯罪に関する表現を問題視する前例を認めると、将来全ての犯罪表現に拡大しかねません。さらに、現在の価値基準で過去の創作物を裁くことにも問題があります。例えば、『源氏物語』や『古事記』のほか、『ギリシャ神話』『旧約聖書』を扱った漫画も、近親相姦の表現があるので、規制されかねないのです」(山口弁護士)
犯罪と犯罪を表現することが同一に語られ、犯罪を扱った漫画が描けなくなることもあるかもしれないというわけだ。明治大学准教授の藤本由香里さんは、「刑罰法規に触れる性行為」という規定について、こう疑問を呈する。
「刑罰法規というのは、時代や国や地方によって違います。時代物やSFの場合も、現代の日本の<刑罰法規>がキャラクターに対して適用されるのでしょうか」
※女性セブン2010年12月31日・2011年1月1日号