2010年の米ドル/円相場は、1ドル=80円近辺まで上昇したものの、年末にかけて83~84円台で推移している。果たして2011年の為替相場はどう動くのか、為替のスペシャリストで松田トラスト&インベストメント代表の松田哲氏がズバリ占う。
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2011年も日本円の全面高が続くだろう。現在のところ、円安になる材料も反転する兆しも見当たらない。特に米ドル/円に関しては、米国のドル安・円高政策が色濃く出てくる1年になるのではないか。
政府・日銀による円売り介入もこの先、米国の意向によって封印されると考えられる。米国の為替政策の最大の狙いは中国元を切り上げることであり、元高にするには同じアジアの通貨である円を高くするのが手っ取り早いという事情があるのだ。日本に円売り介入されると都合が悪いわけである。
もっとも元高が実現したところで米国の貿易赤字体質は変わらないし、雇用状況が回復するはずもないことは米国側もわかっている。1985年のプラザ合意を振り返ってみても、為替政策では米国の貿易赤字体質も財政赤字体質も変わらないことは明らかだ。
しかし、米国は今、自国民の不平不満のガス抜きをするために元高政策をとらざるを得ない。この元高政策が続く限り、米ドル/円には下落圧力がかかり続けるだろう。
私は常々、政府・日銀による円売り介入に効果はないと公言してきたが、介入を封印されると他に打つ手がないのも事実である。日本には政策的に円高を止めるオプションはないと思ってほしい。
ただ、2010年9月15日の介入前後の米ドル/円の値段は、今後、円が米ドルに対して上昇をしていく際に必ず意識されるポイントとなる。介入前が82円台後半(82円85―95銭付近)、介入後の高値が85円90銭付近で86円には到達しなかった。
米ドル/円は2010年11月時点では80円-84円台で推移しているが、これから先、仮にリバウンドがあるとすれば、最初のハードルは86円となる。介入しても届かなかった86円を上に抜けることができれば、トレンド変化の可能性が視野に入ってくるが、実際には、86円突破は極めて難しいだろう。
米ドル/円は2007年6月の1米ドル=124円を起点に3年間で80円にまで一定のスピードで落ちてきた。現状をみても米ドル/円がリバウンドをする兆しはなく、このままずるずると70円割れまで円高が進んでも不思議ではない。ターゲット(目標値)的には65円も考えざるを得ない情勢である。
※マネーポスト2011年1月号