「美人すぎる市議」なんてものが話題になりだしたのは、今から2年ほど前のこと。以来、雨後の筍のごとく、「美人すぎる」女性たちが世の中に溢れ出した。「美人すぎる海女」「美人すぎる書道家」「美人すぎる首相」「美人すぎる歯科医」──。しかし、このブームに違和感を覚える人も多い。
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「美人すぎる××」の“元祖”は、テレビなどでもおなじみの藤川優里・八戸市議だ。2007年4月、同市議選挙でトップ当選をした彼女。翌2008年、青森のローカルテレビで紹介されたのをきっかけに火がつき、誰が呼んだか、「美人すぎる市議」として全国的にブレーク。その後、スペイン紙のウェブサイトで行なわれた、「世界で最も美しい女性政治家」を選ぶランキングで「世界一」となるオマケまでついた。
その後、「美人すぎる海女」大向美咲さんがメディアに頻繁に登場する2009年になると、「美人すぎる××」を発掘しようという動きがメディアやインターネット上で活発になった。
そうした中で、「美人すぎるヴァイオリニスト」の宮本笑里さん、「美人すぎる日本画家」の松井冬子さんが取り上げられ、ウクライナの「美人すぎる首相」ことティモシェンコ前首相、中国の「美人すぎる屋台の売り子」や「美人すぎるバス車掌」が話題になるなど、外国人にまで飛び火。さらには「美人すぎる料理研究家」の森崎友紀さん、「美人すぎる書道家」の涼風花さん、「美人すぎる女力士」の大高静流さんなど、次々に「美人すぎる××」が世に出てきている。
ところがこのブーム、冒頭で紹介した通り、違和感や疑問を持つ向きも少なくない。その原因の一つが、「美人すぎる」という言葉そのものである。
日本語とフランス語の教師として都内の大学などで教鞭を執り、『かなり気がかりな日本語』(集英社新書)の著書がある野口恵子氏は、こう解説する。
「もともと、『すぎる』という言葉は、『食べすぎる』や『大きすぎる』のように、動詞や形容詞、形容動詞と一緒に使われるものであって、『美人』のような名詞と一緒に使われることは基本的になく、現代用語の辞典にもこうした用法は掲載されていません。それに、『過ぎたるは猶及ばざるが如し』という言葉があるように、『すぎる』はもともとマイナスイメージの意味を含む言葉だった。ところが、『美人すぎる××』では肯定の意味で使われています。こうした意味でも比較的新しい言葉の使われ方だと言えるでしょう」
※SAPIO2011年1月6日号