4日、日刊スポーツ(一部地域版)が1面で「ヤクルト身売り」と報じた。結果的に記事は「誤報」だったわけだが、横浜にしろヤクルトにしろ、最近、身売り話が出るのはセ・リーグ球団ばかりだ。これを2004年以来の「1リーグ制移行」への布石だと見る向きもある。スポーツライターの永谷脩氏が語る。
「巨人人気の衰退とともに、もうだいぶ前から、鉄道や既存メディアが球団を持つ意味がなくなってきている。単なる広告塔としては費用がかかりすぎるのです」
これまでセ球団は、入場料収入に加え巨人戦の中継放映権料を基盤に球団経営をしてきた。しかし年々巨人戦の放映権料は減り、地上波の中継はほぼなくなった。最初から放映権料を当てにしない経営を行なってきたパ球団が、ここに来て繁栄するのも必然である。来年は斎藤佑樹も登板するし、星野仙一新監督も始動する。
話題のないセ・リーグは辛い。かつてヤクルトには、「巨人戦には勝たなくていい」と発言したオーナーがいたが、長らく巨人戦放映権料にあぐらをかいてきたツケが回っているというわけだ。
「横浜の売却騒動の時、最後まで買い手がつかないと球団消滅の恐れもあった。そうなるとセの数が減るから、他の赤字球団をもう一つ削って1リーグへ移行するのではないか、という話が囁かれていた」(全国誌記者)
この構図は、04年に渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長が主導した球界再編と似ている。ただし、決定的に違うのは、当時は人気がなく経営難に陥っていたパ球団が、巨人戦の恩恵を受けるためにセ・リーグに泣きついた形だったのに対し、今回はセ球団が悲鳴を上げていることである。ヤクルトの身売り騒動は、セ・リーグ時代の終焉と「1リーグ時代」突入を告げる狼煙なのかもしれない。
※週刊ポスト2010年12月24日号