年末年始は家でゆっくりとテレビでも見て過ごす、という人は少なくないだろう。この「テレビ放送」も規制でかんじがらめの業界であることをご存じだろうか。政策コンサルティングを行う政策工房社長の原英史が解説する。
* * *
この季節、テレビで風邪薬や胃腸薬のCMを目にしない日はない。
CMの最後に「ピンポン」と効果音が鳴って、必ず「『使用上の注意』をよく読んでお使いください」と流れる。中には、タレントが口で「ピンポン」と言うものもある。
この「ピンポン」、実は規制なのだ。
「薬事法」では医薬品の広告について、〈虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない〉(第66条)と定めている。これだけでは抽象的すぎる。そこで役所は業界に「通達」を出した。
厚生労働省はまず、「医薬品等適正広告基準」(昭和55年厚生省薬務局長通知)という通達で、〈使用及び取扱い上の注意に留意すべき旨を付記し又は付言するものとする〉と規定。さらに、業界団体である日本OTC医薬品協会(84社加盟)の申し合わせで、「『使用上の注意』を……」というフレーズを〈静止した明確な文字で明瞭に1秒以上〉表示するとともに、〈視聴者の注意を喚起するような音声等も併用する〉と具体的に決めている。この〈音声等〉が「ピンポン」なのだ。
業界の「自主規制」だから役所は関係ない、と思ったら大間違い。「自主規制」は大抵、業界団体の天下り役員を介し、所管省庁の意向通りに作られる。ちなみに、日本OTC医薬品協会は、鶴田康則理事長(元厚労省大臣官房審議官)ら、2名の役員が天下りだ。役所は「自主規制」という形で、行政の裁量権を行使できるのである。
※SAPIO2011年1月6日号