ライフ

2011年「中国」という災難を読み解くための3冊を紹介

【書評】
【1】墓標なき草原〈上・下〉(楊海英/岩波書店)
【2】中国文化大革命の大宣伝〈上・下〉(草森紳一/芸術新聞社)
【3】中国の地下経済(富坂聰/文春新書)
評者:関川夏央(作家)

* * *
【1】は文化大革命中、内モンゴル自治区におけるモンゴル族大虐殺の記録である。中国モンゴル族である著者は1989年春、「6・4」事件直前に来日、以来日本にとどまって、この本も日本語で書いた。政治宣伝に反応した漢族の集団的狂熱のすさまじさを、余すところなくつたえる。

【2】は、ファシズム型政治の核は「言葉と宣伝」であると、「大字報」や機関紙の記事・写真を読み解いて実証した力作。長い本を書くことで知られた草森紳一は、この本も3500枚書くつもりだったが、108章(人間の煩悩の数)2000枚で無理に終らせた。彼は2008年3月、自宅の蔵書の谷間で亡くなった。

【3】拝金教を信奉する現代中国社会を精密にえがいた富坂聰は、中国に欧米日本型の「民主化」などあり得ないという。大衆の集団的狂熱エネルギーを、きわどく制御している共産党政権が倒れたら、その害毒は、より野放図に吐き出される。そのとき世界は共産党独裁時代を懐かしむだろう、という富坂の言葉は重い。かつ、やりきれない。

※週刊ポスト2011年1月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
“鉄ヲタ”で知られる藤井
《関西将棋会館が高槻市に移転》藤井聡太七冠、JR高槻駅“きた西口”の新愛称お披露目式典に登場 駅長帽姿でにっこり、にじみ出る“鉄道愛”
女性セブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン