「ポプラ社小説大賞」を受賞し、またたく間に大ベストセラーとなった水嶋ヒロの小説『KAGEROU』だが、メディアで宣伝されたように「ペンネームによる一般応募」ではなく、あらかじめ賞を約束されていた文字通りの「出来レース」だったとしたら、(賞金2000万円辞退などの)美談に打たれて本を買い求めた読者はどう思うだろうか。
実際には、広告代理店のB氏や、在京テレビ局の出身で女性出版プロデューサーC氏が水嶋の相談にのったり、出版社への持ち込みをしていたとされている。
ポプラ社に取材を申し込んだところ、書面での回答が寄せられた。C氏から役員に水嶋の作品が持ち込まれていたかを問うと、「そういった事実はございません」と答え、「10月25日の最終選考会で受賞作を決定し、受賞者に連絡したところ水嶋ヒロ氏の事務所の連絡先であったことが判明しました」と「大賞受賞者が水嶋であることは誰も知らなかった」という会見通りの内容を繰り返した。
また、C氏へ数%の印税が支払われるとの情報があったが、それについても「そういった事実はない」としている。
しかし名前が挙がった広告マンB氏、出版プロデューサーC氏には明らかな動揺が見て取れた。
記者がB氏に電話をかけたところ、「どぉーもー、お疲れ様です!」とハキハキとした様子で対応した。しかし「水嶋」や「C氏」の名前を出したとたん、突如としてうろたえ始めた。
「え、え? あ、いや……。いろいろと相談しなきゃいけないので、折り返し連絡させて頂きます」といって電話を切ったきり、連絡が取れなくなってしまった。
出版プロデューサーのC氏も、話をぶつけたとたん、「だ、誰から聞いたんですか?」と声をうわずらせると、数秒にわたって沈黙。その後、声を絞り出すように「全く関係ありません。誤報です」と仲介の事実は否定した。ただし、小説を持ち込んだとされるポプラ社の役員D氏とは友人であるといい、水嶋とは「3年ほど前に会食の場でお会いした」と面識があることを認めている。
また、水嶋と絢香が現在所属している事務所からも、メールで取材への回答が寄せられた。
B氏とC氏について、「お2人とも存じております」と水嶋・絢香ともに面識があることを認めた上で、「この作品(『KAGEROU』)に関して相談をしていたという事実はございません」と、両者が仲介に関わったことを否定した。
※週刊ポスト2011年1月7日号