東京都議会で15日、性的な表現があるマンガやアニメを規制する青少年健全育成条例の改正案、いわゆる「マンガ焚書条例」が賛成多数で可決された。マンガ、アニメ化されれば規制対象となる古典文学や小説は無数にある。紫式部の『源氏物語』、シェークスピアの『ハムレット』など、近親相姦は古今東西の文学の一大テーマだ。
近年は話題作を発表していないが、条例改正を進めた石原慎太郎・都知事の就任直後に出版された小説『聖餐』には、主人公が森の中で性交する男女をカメラで撮影する場面が描かれている。その内容は、男が女の喉を切って殺害、内臓をえぐり出して、男も女の裂かれた腹に顔を突っ込んで絶命する、という実にグロテスクなもの。間違いなく条例が問題とする〈刑罰法規に触れる性交〉である。
まさか知事の指示ではないだろうが、そもそも、なぜマンガやアニメが規制対象で、小説は外れたのか。条例改正を進めた都青少年・治安対策本部は、
「小説は内容を判断する能力が必要だが、マンガなどの絵や画像は子供でも見ればわかるから」と説明する。どうやら小説は読めず、マンガを見るだけの子供を対象とするのが、都の“青少年健全育成”らしい。評論家で日本マンガ学会会長の呉智英氏が喝破する。
「絵が対象だというのなら、なぜ春画などの浮世絵を規制しないのか。それでは、支持母体や関連団体へのアピールにならないからです。老若男女に受容者が多いマンガを取り締まれば手柄になるという政治的力学が背景にある」
※週刊ポスト2011年1月7日号