この年末年始、民主党内には硝煙の臭いが立ちこめている。菅直人・首相と岡田克也・幹事長が小沢一郎・元代表に「政倫審への出席要請」という砲弾を撃ち込み、小沢支持派は相次ぐ地方選での惨敗に「地方が火を噴く」と執行部更迭の臨時両院議員総会開催を要求。両陣営が睨み合ったまま年越しを迎える。
菅首相は「市民派」の看板をかなぐり捨て、“タカの着ぐるみ”に身を包んだ。拉致被害者家族会との会合で、
「北にいる拉致被害者をいかに救出するか、考えておかなければならない」と、有事の際に自衛隊を朝鮮半島に派遣するといい出したかと思うと、予算編成大詰めの時期に突然、硫黄島を訪問した。現地の追悼式では「一粒一粒の砂まで確かめ、一人でも多く帰還できるように全力を尽くす」と表明した。さらに、周囲が「時期尚早」と止めるのを振り切って、普天間移設問題で燃え上がる沖縄訪問も決断した。
変身の理由はわかりやすい。政権維持のための「大連立」に向けた打算だ。
菅首相は年末にたちあがれ日本の与謝野馨・元財務相や森喜朗・元首相と相次いで会談した。「総理は消費税引き上げで一致する与謝野氏に民主・自民大連立の仲介役になってほしいと頼んでいるが、ネックはたちあがれ日本の平沼赳夫・代表が、『左寄りの菅内閣とは組めない』と反対していること。
邦人救出発言は、その平沼氏が同席している前でタカ派姿勢を示したものだ。硫黄島の超党派遺骨帰還議員団には、たちあがれ日本、社民党、そして森元首相の働きかけで自民党も参加した」(菅側近)
参院選惨敗後に“創価学会美術館”を訪問したのと同じ三文芝居なのだ。それこそ「英霊の政治利用」である。そのうえ森氏は、「小沢さんが策動している限りは(仲介)しない」と条件をつけている。菅首相のごますりは、「小沢さえいなければ民主党など赤子同然」と考えている旧政権の老政治家たちに都合良く使われたピエロでしかない。
※週刊ポスト2011年1月7日号