11月23日に発生した延坪島砲撃事件では、最前線で「北朝鮮への備え」がまったくできていなかった韓国軍の「平和ボケ」。なぜこうなってしまったのかを産経新聞ソウル支局長の黒田勝弘氏が解説する。
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韓国では近年、韓国軍の仮想敵は北朝鮮ではなく、まるで日本であるかのようなパフォーマンスが続いていた。
たとえば「国防白書」の表紙に日韓が領有権で対立している竹島(韓国名・独島)の写真を掲載し、島の上空を哨戒飛行する空軍機を誇示している。海軍は新建造艦を「独島」とか「安重根」などと命名し、島周辺での海上パトロールを強調してきた。
昔は新年となると、南北軍事境界線の酷寒の山岳地帯で、北をキッとにらむ兵士の写真が出て「今年も国の守りには異常なし!」とアピールしたものだが、近年はもっぱら南の方(日本)を見据える「独島警備隊」の写真になっている。
ソウル近郊で対岸が北という江華島の芸妓峰では、毎年クリスマスとなると前線部隊のクリスマスツリーが話題だったが、マスコミに登場しなくなって久しい。
哨戒艦撃沈に次ぐ今回の延坪島砲撃に、韓国マスコミ(世論)は北朝鮮への怒りを爆発させ、やられっ放しの韓国軍を非難している。しかし北の脅威と北への備えをいい加減にし「独島防衛!」などと迂遠なことを先頭に立ってやってきたのは、マスコミではなかったか。
今回、その大きなツケが回ってきたのだ。韓国マスコミに反省は見られない。
※SAPIO2011年1月6日号