「ポプラ社小説大賞」を受賞し、またたく間に大ベストセラーとなった水嶋ヒロの小説『KAGEROU』。実際の選考の過程はどうだったのか。
多くの文学賞では作家や評論家などが選考委員をつとめるため、主催する出版社の意向が選考に入り込む余地は少ない。
しかし「ポプラ社小説大賞」の場合、社内の13人の編集者が選考する仕組みになっている。今年の応募総数は1285作品。「齋藤智」の名で書かれた小説も、形のうえではそのひとつに過ぎず、この段階で“仕掛け”を知っていたのは、ごく一部の人間だけだった。
ほとんどの社員は齋藤智の正体を知らず、選考に携わっていた。ポプラ社関係者の話。
「13人全員が応募作品の下読みをするが、『KAGEROU』への評価は賛否両論で、正直なところ否定的な意見も多かった。世に出すクオリティに達していないというのがその理由。しかし社内で発言力のある人物が強く後押ししたこともあり大賞に選出された」
※週刊ポスト2011年1月7日号