世界的にも出生率が極端に低い日本社会。作家の堺屋太一氏が指摘する少子化対策は、なかなか刺激的だ。堺屋氏はこう語る。
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「世界人口推計2008年版」(国連調べ・2005~2010年推計値)によると、日本の出生率は「1.27」で、世界的に見ても極端に低い。少子化を食い止めることは喫緊の課題となっています。
まずは若年層の出産を増やすことが、日本の少子化対策の第一歩だと思います。そのためにも、高校生や大学生の出産が良くないことだと考える倫理観を変え、むしろ学生出産を歓迎する社会の雰囲気をつくることが大切です。
若年出産を奨励すれば、1世帯あたり4人ぐらいは子供が産める。そうなれば、親だけでなく、兄弟間で助け合いながら暮らすことができます。家族の絆が生まれ、世代を超えた付き合いや人脈を築けるメリットもある。いまのように自殺者や孤独死が後を絶たない寂しい世の中にはならないでしょう。
もちろん、若者が産み育てやすい社会環境の整備や経済的支援も不可欠です。例えば、大学に託児所を設けて、学びながら子育てできる環境をつくれば、親に責任感が芽生え、就職しても自立した社会生活が送れるはずです。子育て資金については、親が24~26歳ぐらいになるまで、月に20万円ほどの公的な奨学金を貸与する制度を作ればいい。後に返す奨学金なので、「子ども手当」のように財源が痛むこともないでしょう。
今後10年間、若年層の出産が増え、出生率が「2.0」まで回復すれば、少子化問題はほぼ解消されます。「2.08」という数字になれば、永久に人口が変わらないといわれています。出生率の増加による経済効果もかなり期待できます。死蔵している1400兆円の個人資産は相当に動くでしょうし、日本経済が活気づくことは間違いありません。
日本の若者に改めていいたい。学生結婚・出産、婚姻前の妊娠は決して恥ではありません。知価革命によって、欲しいときに満足するモノを買うというライフスタイルが進んだように、子作りの年齢も一様にする必要はありません。自己責任において自由な子育てや人生の順序を組み立てられるような時代になっていることを、再認識して欲しいと思います。
※週刊ポスト2011年1月7日号