【書評】
【1】うつ病新時代(張賢徳/平凡社新書)
【2】うつと気分障害(岡田尊司/幻冬舎新書)
【3】一億総ガキ社会(片田珠美/光文社新書)
評者:香山リカ(精神科医)
* * *
うつ病に関する本は山ほどあれど、どれを読んで、どれを信じてよいのかわからない。そんな人におすすめしたいのが【1】。うつ病治療、自殺対策の第一人者として活躍する精神科医によるガイドブック。くわしく知りたいというより、とりあえず広く正しく知りたいという人にはうってつけだ。
最近は、うつ病に軽い躁状態が混在する双極性障害も増えつつあるが、そういった現代に増えつつある“うつ病バリエーション”にもくわしいのが【2】。「ああ、うつ病。心のカゼだよね」とわかったふりをして簡単にすませるのは危険、ということがよくわかる。
とはいえ、診察室にいると、「うつ病」という診断名に逃げ込み、仕事や家事をパスしよう、とする“困ったちゃん”にも日常的に遭遇する。そんなうつ病大国ニッポンについて知りたい人は、女性精神分析医がこの国をズバリ診断した【3】を。
依存したり他人に責任をかぶせたりするのをやめて、真のオトナになる。それも「うつ」の処方箋かもしれない。
※週刊ポスト2011年1月7日号