【書評】
【1】一週間de資本論(的場昭弘/NHK出版)
【2】ガンディーの経済学(A・K・ダースグプタ/作品社)
【3】武士の家計簿(磯田道史/新潮新書)
評者:森永卓郎(エコノミスト)
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国民が熱狂した政権交代から1年あまりしか経っていないのに、この国の閉塞感は高まるばかりだ。それは、新自由主義経済システムを否定したにもかかわらず、新しい経済社会のグランドデザインを描けていないからだ。
【1】は、資本論を1週間で理解するというNHKの番組をもとに作られた本だ。マルクス研究40年の著者が分かりやすく解説する。これを読めば、資本という吸血鬼を野放しにする新自由主義に戻ることはできないことが、はっきり分かるだろう。
【2】は差別や貧困を解決するための、経済理念を示している。ガンディーは、自分に近い人から助けなさいという。だから、無秩序な自由競争を批判し、地産地消を勧める。自分のできるところから取り組むのが、非暴力・不服従なのだ。
【3】映画では、家族愛を見事に描き出しているが、原作にはもう一つ大きな教訓がある。貧しかった下級武士は、自らは厳しい倹約をしながらも、使用人の雇用と生活を最優先で守った。自らの利益しか考えなくなった経営者が、武士道を取り戻すこと。それが、日本経済が元気を取り戻すためのカギになるのだ。
※週刊ポスト2011年1月7日号