「美人すぎる」の後に続くのは、決まって「職業」である。「××なのにキレイ」なのか、はたまた、「××だからキレイ」と思うのか。消費者がつい「美人すぎる××」に食いついてしまう「心の仕組み」に迫った。
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「美人すぎる××」ブームをどう分析するか。マーケティングコンサルタントの西川りゅうじん氏は、「キャッチフレーズが持つ力」について解説する。
「毎日、様々なメディアに触れている消費者にとっては、いくら美人でも、意外性がないと記憶に残りません。毎年、多くの新人女優やモデルが出てきて、みんな間違いなく美人ですが、彼女たちがキレイなのは当たり前だから、なかなか印象に残らないのです」
そして西川氏はこう話す。
「しかしそこへ『市議なのに美人』と言われると、一気に意外性が高まる。キャッチフレーズは、意外性があればあるほど、その力を発揮するんです。特に(八戸市議の藤川優里氏のような)『市議』は職業の持つイメージとのギャップが大きかったから、『美人すぎる××』の元祖になったのでしょう」
確かに地方議会の女性議員と言えば、PTAの役員や地元の農業関連団体の幹部などを長年務めた、人生経験豊富なご婦人方……というイメージがある。藤川優里氏が所属する青森県の八戸市議会でも、女性議員3人のうち藤川氏以外の2人は“アラ還”のベテランだ。 この状況は地方ではだいたい似たり寄ったりで、そう考えると、「市議なのに美人」という、職業とのギャップについつい惹かれてしまうというのも頷ける。
この意味では、“ウニを採ってン十年”といったようなオバさまが多いイメージの「海女」や、「書道家」「女性相撲取り」などに我々が注目してしまうのは、この「ギャップ」によるものだと言えよう。
逆に言えば、「美人すぎる女優」や「美人すぎるミスユニバース」は「ギャップ」がないから存在しえないというわけだ。
取材・文/ジャーナリスト・沢野竜一
※SAPIO2011年1月6日号