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中国は25年前まで首相の靖国参拝を批判していなかった

 尖閣問題を受けた世論調査では、現在の日中関係を「悪い」と回答した人が実に90%にのぼり、87%の人が中国を「信頼できない」とした。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、中国の「嘘と裏切り」が、その軍事力・経済力の成長と密接に関係していると指摘する。

 * * *
 今でこそ日本の軍事力強化に激しく反対する中国ですが、1978年に日中友好条約を締結した当時は、ソ連の脅威を受けて、日本に軍事力強化を求めていました。1980年に訪中した中曽根康弘氏に対し、中国人民解放軍の幹部は、軍事予算をGNP比2%に倍増するよう要求していたほどです。
 
 しかし、1980年代前半にソ連の力が衰え、米ソ対立のなかで中国がソ連を恐れなくてもいい状況になると、中国の態度は一変しました。日本から多額のODA受け取りながら、一方では日本の国際的な地位を貶め、軍事的にも心理的にも圧力をかける戦略をとり始めたのです。

 そのひとつが靖国参拝批判です。靖国神社がいわゆるA級戦犯を合祀したことが公になったのは1979年。それ以降、当時の鈴木善幸首相らが参拝しても、中国は一言も批判していませんでした。ところが、1985年以降、中国が突然、抗議を始めたのです。
 
 それについて、2005年11月、外国特派員協会で会見した王毅駐日大使(当時)は、200名以上の記者らを前にこう語りました。

「中国の立場ですね、継続性のあるもので、変わっておりません。1985年、このことですね。A級戦犯が祀られていることが公になってから、我々も反対の立場を貫いてきました」
 
もちろん「85年に公になった」というのも、「貫いてきた」というのも嘘です。情けないのはその場に居合わせた日本メディアの記者たちで、明らかな事実歪曲をまったく指摘しませんでした。結果、王毅氏の発言はそのまま海外に流れてしまいました。

 中国の嘘に嘘を重ねる手法に、きちんと反論するどころか、日本側が自ら騙されるような愚もありました。東シナ海のガス田開発問題は、その典型です。
 
 中国は1992年に領海法を制定すると、すぐに東シナ海に鉱区を設定し、国際法を無視して日本の排他的経済水域での資源調査を始めました。当然、海上保安庁や海上自衛隊は危機感をつのらせましたが、驚くべきことに森政権時代の2000年、当時の河野洋平外相は、中国側に「事前通報制」を提唱したのです。

 通報すれば調査を是とするもので、事実上自由行動を許したに等しい内容でした。しかも中国はそれさえも無視し、通報もなく堂々と資源調査を行なうようになっています。
 
 一方の日本政府は、長年にわたって資源調査の申請をしてきた日本の企業に対して、日中関係に摩擦が生ずるとの理由で許可しませんでした。自分たちだけが四角四面に、もっと言えば馬鹿正直にルールを守り、相手のルール破りには一切目をつぶってきたのです。
 
 そして中国は2008年の日中共同開発の合意さえ無視し、ついにガス田「白樺」の掘削を開始したと見られます。この状況を導いた外務省と親中国派の政治家の責任は、極めて重いと言わざるをえません。

※SAPIO2011年1月6日号 

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