作詞家の秋元康氏がプロデュースするAKB48の競争の激しさについて山藤章一郎氏が解説している。
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プロデューサーの秋元康氏氏はこう語っている。「高校野球に似ています。弱小の野球部が厳しい練習の末、甲子園で優勝するまでのプロセスに熱狂するんです」
少女たちが歌うのは、「あなたが好き」というかつてのアイドルソングばかりではない。「前へ前へ! まっすぐ進め! 川を渡れ!」〈RIVER〉、「支配された鎖は引きちぎろう」〈Beginner〉、「新しい世界の扉を開けよう」〈自分らしさ〉と歌う。
新曲を歌うメンバーは当初、秋元氏が選抜していた。だが、ファンのブーイングが起きた。
それならファンが選べる投票〈総選挙〉にしようと。これによって、メンバーのうちのだれが一番人気か二番かが数字に出る。 ダービーで人気馬に賭ける気持ちにも似ている。
投票資格は、ファンクラブの会員になると1票。CDを1枚買うとまた1票。ファンクラブには、携帯サイトの会員やライブのオンデマンド放送の会員など、いくつかある。
目当ての少女を応援したい心理が、複数のクラブに入ったり、CDを何枚も手にさせる。 これまでの〈総選挙〉で上位を占めた少女は以下の通り。
大島優子 前田敦子 篠田麻里子 板野友美 渡辺麻友 高橋みなみ……
〈総選挙〉の結果、12位までがメディア選抜としてTV番組などに出演でき、21位までがシングルの表題曲を歌うことを許される。集合写真でセンターを取れるのもマイクも、上位が独占する。
降格、昇格もある。一軍から二軍へ、その逆も。さらに、プロ野球の戦力外通告に通ずるか、姉グループ〈SDN48〉へのスライドもある。この勝ち残り、生き残りのガチバトルが、彼女らにたえず強い緊張を強いる。
そのバトルの場、押しかけるファンの聖地、そこが〈AKB48劇場〉である。
※週刊ポスト2011年1月7日号