「ブログ市長」として知られる竹原信一・市長のリコールが成立し、2011年1月16日の出直し市長選に向けて動き出した鹿児島・阿久根市で、民主主義を揺るがしかねない事態が起きている。失職当日、出直し市長選に出馬を表明した竹原氏に、思わぬ人物から連絡が入ったのだ。副市長の仙波敏郎氏が明かす。
「リコール成立の翌日(12月6日)、竹原さんの携帯電話に鹿児島地検の幹部から電話が入りました。任意での事情聴取要請でした」
次の日には、仙波氏あてに竹原氏の出頭を求める電話が入ったという。「“やましいことはない。まして選挙に向けて忙しい時期に、こちらから出向く必要もない”と竹原さんは態度を保留しました。地検側からは、選挙期間中のブログ更新や、市の職員を懲戒免職にした件などについて話を聞きたいといわれた。弁護士を立ててほしいともいわれ、すぐに逮捕があるといわんばかりの口調でした」(仙波氏)
竹原氏は市長に初当選した2008年8月の選挙で、告示後にブログを更新していたことをもって、公職選挙法違反(文書頒布)の疑いで書類送検されている。
たしかにブログ更新問題は処分保留状態だが、なぜこの時期の出頭要請なのか。一部の支持者からは、「鹿児島地検には2003年、県議会選挙絡みの贈収賄事件をでっち上げた志布志事件(※注)の例もある。改革派の再選を阻む政治的な動きではないか」といぶかしむ声が上がっている。
リコール投票、そして出直し選という「民主主義の極致」ともいえる状況の中、それを公権力が妨害することなどあってはならない。こんな重大な問題を完全無視している大マスコミも気味悪い限りである。
注)志布志事件/2003年4月、鹿児島県議選で当選した議員の陣営が志布志町現・志布志市で現金等を配ったとして、議員や親族が公職選挙法違反容疑で逮捕され、その後無罪が確定した事件。取り調べの際の自白強要や数か月に及ぶ異例の長期拘留など、違法な取り調べが問題となった。
※週刊ポスト2011年1月7日号