「美人すぎる」の後に続くのは、決まって「職業」である。「××なのにキレイ」なのか、はたまた、「××だからキレイ」と思うのか。消費者がつい「美人すぎる××」に食いついてしまう「心の仕組み」に迫った。
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『女はギャップ』(扶桑社文庫)などの著書がある精神科医の名越康文氏は、その「ギャップ」から「希少性」が生まれていると分析する。
「男性が美しい女性に惹かれるのは当然のことですが、最近では、既成の価値観に退屈してきた傾向があります。ただ美しいだけではなく、付加価値を求めようとする心理が働いているのです。『××なのに美人』と言われると、そこに希少性という付加価値が発生する。だから、『美人すぎる』とはつまり“美人を超えた”美人ではなく、いわばオンリーワンの付加価値に、男性たちは惹かれるのだと思います」
名越氏によれば、一方でギャップが生む「謎めいた印象」が男たちを引き寄せている面もあるという。
つまり、美しい女性は、男性から引く手あまたであり、結婚することで十分幸せな人生を歩んでいけると多くの人が考える。しかし、厳しい練習が必要な「海女」や「ヴァイオリニスト」、難しい勉強が必要な「歯科医」に、なぜ彼女たちは挑戦しようと思うのか。その謎めいたところが、男たちの想像をかき立てるらしい。
名越氏はこう解説する。
「彼女たちの内面にまで思いを巡らすと、『私は海に潜るんだ』『私は相撲を取るんだ』『ヴァイオリンを弾くんだ』という強い意志を感じる。男性は、集団的に、かつヒエラルキーの中で生きているから、そうした価値観とはまったく異質の、女性たちの『強い意志』に憧れを持ちやすいと言えます」
美人があまりいないと思われる職業に就いていれば就いているほど、その女性が持っていると思われる「強い意志」の魅力があるというわけだ。いわば、「その職業だから美人」に感じるという心理状態である。
取材・文/ジャーナリスト・沢野竜一
※SAPIO2011年1月6日号