忘年会、新年会が続くこの時期、暴飲暴食に走って肥満へ突き進むケースは多い。肥満は健康上のリスクを大いに高める。健康管理が必須である現代のビジネスマンにとって、「太らない」ことは非常に重要だ。『脳をダマせばこんなにやせる』(小学館)で最新メソッドを提唱し、ヘルスケア界に大反響を巻き起こしている医学博士の米山公啓氏がその独自理論と実践法を明かす。
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食べ過ぎを防止するには、食事中に「満腹」という情報が脳から発せられればよい。基本は脳の視床下部にある満腹中枢を刺激することである。満腹中枢が刺激されるまでには通常、食事を始めてから20分ほどかかると言われている。
その意味で、「ゆっくり食べる」ということは理に適っている。だが、問題はどうやったらゆっくり食べられるのか、ということだ。
ビジネスマンにお勧めなのは勉強しながら食べることだ。英語、簿記、不動産鑑定士、何でも良い。自分が仕事上必要としているスキルを身につけるために問題集を解きながら食事をする。
大切なのはペンを使うこと。そうすることで強制的に一旦、箸を置くことになる。これで食事のペースは一気にスローダウンする。ビジネスマンとしての能力も向上し、一石二鳥である。
ただしペンを持たずに暗記するだけの英単語帳などは効果がないので要注意だ。
また、料理の食べる順番を変えるだけでも、摂取カロリーを大幅に減らすことができる。食事の中で、最もカロリーが高いのは炭水化物である。日本人は食事の際、米があることが当たり前になっているが、この米を一番最後に食べるようにする。つまり先におかずから食べるのだ。満腹になって食べなかった最後の1品が魚・肉などのタンパク質か、炭水化物かではカロリーも自ずとかわってくる。
ちなみに、米は硬めに炊いた方が、噛む回数も増えるため、食べるペースがゆっくりになる。また、消化に時間がかかるので空腹になりにくい。液体に近ければ近いほど、体内に吸収されやすく、血糖値が急上昇する。続いて脳がその血糖値を下げようと反応し、大量のインスリン分泌を促す。その結果、血糖値は急降下し、そのことで摂食中枢が刺激されてしまい、すぐに空腹を感じてしまうのだ。
さらに、「脳に認識させる」ことで食事量を抑えることができる。方法は簡単だ。デジカメで食事を撮影するだけ。最近の携帯電話には大抵カメラが付いているからそれを利用すればかさばらないし、食事時でも携帯電話は肌身離さず持っているだろう。
撮影すると何がいいのか。当たり前だが、撮影した写真を画面で見ていくと、自分がどれだけ食べたかがわかる。昨晩は暴飲暴食してしまったとか、今日の昼は丼ものを大盛りで食べてしまったとか、自分自身に再認識させることができる。
「そんなことしなくても何を食べたかぐらい覚えている」と言う人も多いだろう。だが、侮ってはいけない。人間は食事に関しては非常に都合良く自分の記憶を操作する。ある意味、無意識に脳をダマして、「そんなに食べていないからまだ食べても大丈夫」という結論を導きやすいのだ。しかもやっかいなことに、自身をダマしているという自覚はほとんどない。
実際、この方法を用いたところ、自分がいかに食べ過ぎだったかに気づき、予想以上に食事の量が減ったという人が多い。半信半疑の人も、携帯電話のカメラを使うなら初期投資はゼロなのだから試してみるといい。
※SAPIO2011年1月6日号