ニュースの裏に隠された真相とタブーをジャーナリストの須田慎一郎氏が暴く。
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日本の長期金利が上昇し始めている。アメリカの追加金融緩和策の後退によって上昇した米金利につられたものだが、ペースがあまりに速い。
去る12月2日には、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが、約5か月ぶりに1.2%ラインを突破した。 金利の上昇とは、債券価格の下落を意味する。つまり各社の債券ディーラー達にとってみれば、保有債券に含み損が発生することになる。
「ここ最近の国債マーケットは、まさに売りが売りを呼ぶ展開になっている。はっきり言って、暴落一歩手前だ」(大手金融機関の債券ディーラー)
こうした状況の中、必死になって国債を買い支えているのは日銀だけなのだという。メガバンク幹部は語る。「何せ日銀のポートフォリオは、半分近くが国債によって占められているのが実情です。国債価格が下落して最も大きな影響を被るのは、他ならぬ日銀だからです」
いずれにしても国債価格の下落(金利は上昇)は、日銀の信用低下に直結する。そして日銀の信用低下は、円の価値の大幅な下落、つまりハイパー円安につながるのだ。
「行き過ぎた円高に苦しむ日本経済にとって、ハイパー円安と言ってもピンとこないかもしれませんが、充分に起こりうるシナリオです。そして今の景気情勢で円安に振れていったならば、間違いなくスタグフレーションに陥ることになります」(前出同)
つまりここへきての長期金利の上昇は、マーケット関係者にそうしたネガティブシナリオをも想定させてしまうほどの不気味な動きだった。 「しかしそうした悲劇的な状況が発生するのは、少なくとも長期金利が2.0%ラインを突破してからの話」(前出同)
さて日銀が今後どのような動きを見せるのか、長期金利の動向とともにマーケット関係者は固唾を呑んで見守っている。
※SAPIO2011年1月6日号