トイレをきれいにすると運気が上がると言われているけれど、意地悪な姑に対するストレス解消を兼ねて、トイレ掃除をする神奈川県32才の主婦K子さん。運気UPはともかく、気分はスッキリのようだ。(女性セブン1988年7月21日号より)
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「K子さん、ちょっと」
というんで姑のそばへ行くと、いきなり私の腕をつかんで、トイレへ押し込んだのよ。
「便器に顔つっこんで、よーく見てみなさい。縁のところにウンコがこびりついてるじゃないの。
どうせ、あんたがたれ流したものに違いないんだろ。あんたはうちでいちばん食欲旺盛なんだから」
姑のダミ声がガンガン。それでこういうのよ。
「さあ、今日から、よそさんがきても“さすが、トイレまでスベスベですねえ”と感心するくらいにみがいとくれよ。ピッカピカにだよ」
頭にカーッと血が上ったけど、唇かんでこらえたわよ。することなすことケチの連続で、ムラムラーッと復讐心が燃えちゃってね。
その晩、姑が寝ついてから、トイレの掃除を始めたわけよ。
“よーし、こうなったらとことんやってやれ”
最初、便所ブラシでゴシゴシやってたら、なんかむしょうに悲しくなっちゃってね、そのうちいい方法を思いついたのよ。
そう、姑の使ってる歯ブラシで便器をみがいてやろうと……。姑の使ってる歯ブラシは、豚毛の上等品で、毛先が長いのよ。まさに便所ブラシにピッタシ。家じゅうが寝静まった深夜に、姑の歯ブラシで、キュッキュ、キュッキュ、ゴシゴシ、ゴシゴシ、もう手が痛くなるほどみがいてやったわよ。
歯ブラシの毛がね、まるで姑への私の憎悪を吸い込んでくれるようで、そりゃあ快感だわよ。
もう目には目、便器には歯ブラシよ。まさか、自分の歯ブラシが便器ブラシにされてるとはちっとも知らない姑は、朝起きるなり、トイレを点検していうのよ。
「ほー、トイレが急にきれいになったじゃないの」――
そして、汚物がたっぷりしみこんだその歯ブラシでクチュクチュ、ゴシゴシと、それは丹念に歯をみがくのよ。
私、いってやったの。「お姑さん、うちのトイレ、ほんとにピカピカになったでしょ」
あれから、姑の歯ブラシで深夜に便器をこするのが日課になっちゃったわよ。だって、せめてもの姑への逆襲だもの。こんな気持ち、姑と同居していないあなたには、わかんないわよねえ。